壁面仕上げ

 

■ 塗装

 次に2種類の仕上げを示します。アクリルリシン吹き付け仕上げは、外壁の仕上げとしてよく採用されました。しかし、不用意に露出した皮膚でこすったりすると擦過傷になったり、あるいは革製品をすったりすると傷になったりします。高価なハンドバックなどだと、居住者にとって気持ちのやり場がないことになります。もし、通路などがこのような仕上げであるならば、表面に突起が少ない仕上げとすることを修繕工事の時に計画することがよいと考えます。

 右図はアクリルシリン吹き付け仕上げだった部分に、フィラーを塗布し、層塗りして凹凸をなくしたものです。これにより、上記のようなことが解消されました。また、この塗装には超低汚染アクリルシリコン塗料が塗布されました。南流山弐番街の外壁は5年経た現在も美観が保たれています。(なお、梁下などの塗装仕上げは透水性のある材料とすることが必要です。これは塗装面の下部に水が入り込んだ場合、一番下に水がたまることから、透水性を保たれていないと膨れなどの現象を発生して塗装を早期にだめにする可能性があることによります。)

 このように従来の壁面仕上げについても利用者の安全や財産を守る観点からの検討が必要です。

アクリルリシン吹き付け仕上げ

超低汚染アクリルシリコン仕上


■ タイル

 南流山弐番街では妻壁のタイル部を補修後、超低汚染とうたうトップコートを塗布しました。5年経た現在も、雨に際して汚れが自然に流れ落ちる、きれいな状態が維持されています。外壁の塗装部の仕上げとあわせるため、この仕様となりました。全面タイル仕上げのマンションでは仕様に含めることの検討の価値があると思います。

 大規模修繕工事を実施した直後は「きれいになった」と思われますが、チリなどの付着は防げません。このため、しばらくすると「いつ、外壁塗装したの」といわれる状態になります。大規模修繕工事は構造物の耐久性の維持という重要な部分がありますが、専門外の人には理解されにくいものです。このため、工事後、長期にわたって美観が維持されるための仕様の検討も重要です。

 

 

■ 外壁塗装を計画する上で留意する事項

 雨や埃の付着は別として、それ以外の外壁の汚れとその原因を確認して、この対策も外壁塗装工事の全体計画の中に含める必要があります。

 南流山弐番街ではTESの排気ロ(左下の写真の右の箱)の壁面に結露水による錆び垂れが生じていました。これを対策しないと外壁を塗装をしても汚れが再発してしまい、美観を損ねることになります。

 そこでステンレスの排気ボックス内部をコーキングして結露水がホース以外から流れなくするのとボックス自体を壁面から離して取り付けるためにスペーサを挟む対策をしました。結果はうまくいったようで5年経過しましたが、錆び垂れは発生していません。また、写真の左側のキッチンの排気口はフード付のものとすることで、壁面への汚れの付着がなくなりました。なお、外壁仕上げを耐汚染性の高い材料としたことも汚れの付着低減に効果がありました。

大規模修繕工事着工前(錆垂れあり)

大規模修繕工事から5年経過後

  外壁塗装をすると、他に汚れた部分があるとその部分だけ、目立つことになり、「工事をし忘れたのか」といわれたりします。そこでこれを考慮して、塗装範囲を計画します。また、これは建物全体の色彩計画を立てる上でもよい方向に働きます。

 南流山弐番街では、各住居のバルコニーを仕切る防火隔板が左下の写真のように雨などで汚れて落ちなくなっていました。外壁塗装をするとその汚れが目立つことから、この隔板も塗装することを工事範囲に盛り込みました。色を外壁と同じにしたことから、一体感のある仕上がりとなりました。

改修工事前

改修工事後