洗濯機パン

 

 標準の洗濯機防水パン(EF-7B、ヤマハ、63cm×80cm)で全自動洗濯機を設置することが可能ですが、全自動洗濯機の導入にあわせて、全自動洗濯機用の小さい洗濯機パン(64cm×64cm)への更新も考えられます。(「全自動洗濯機であれば直接、排水口に洗濯機のホースを入れられるから、洗濯機パンは不要」と極論する人がいますが、不注意などで漏水事故が起きているため、パンの設置は不可欠です。)
洗濯機パンを小さくすると排水口が洗濯機の下となって、定期排水管洗浄で洗濯機パンの排水管の洗浄を行うのに洗濯機を移動しないと作業できなくなる場合があること、そして洗濯機パンの更新は床下の既存の排水管から排水口の位置が限定されるなど、注意すべき事項があります。なお、洗面化粧台の項で述べたように洗濯機パンを小さくしても洗面化粧台を洗濯機パン側に寄せることはできません。小型の洗濯機パンへの更新は洗面所の足元寸法を広げるためとなります。
 次に配管工事を洗濯機パン周辺に限って行う場合の留意事項を解説します。

(1) 排水口の位置

 洗濯機パンを更新する場合、その排水口の位置が変わるために床下の排水管の改修が必要です。洗面所の床は12mm厚のベニア板で、コンクリートスラブ面から17cmの高さにあります。床下の高さ約15cmの空間には、洗面化粧台、洗濯機パン、浴室、トイレ、TESの給水管、給湯管、排水管が配置され、さらに床を支える合成樹脂の支柱がおよそ30cm間隔で配置されています。さらに1階と2〜9階では床下配管の配置が異なります。そこで既存の排水管を流用して工事を行う場合、排水口の位置は図2のように1階と2〜9階では異なったものとなります。なお、床を支える支柱で新しいトラップと干渉するものは撤去の必要があります。

図2 64×64cmの洗濯機パンの設置(奇数号室の配置を例として表示)

(2) 洗濯機パンの高さの調整

 標準のヤマハ洗濯機防水パンEF-7Bの洗濯機パン用横引きトラップの排水管に接続される排水口の中心高さは床面から58.3mm下がった位置にあります。これに対して例えばTOTOの64×64cmの洗濯機パンPWP640用の横引きトラップ(PJ2008)の排水口中心高さは床面から71mm下がった位置となります。そこで既存の洗濯機用の排水管を途中で切って、新しい洗濯機パンの排水管を接続する場合は、排水横枝管の勾配が少なくなったり、配管に無理な力がかからないように、洗濯機パンより若干大きい65×65cmの12mm厚の排水トラップ周辺を穴明け加工したベニア板を洗濯機パンの下に設置し、その上に洗濯機パンを設置して高さ調整して既存の排水管に接続する方法をお薦めします。ベニア板は既存の床面に木ネジで複数点で固定することで撤去した支柱の代わりとなります。

【注意】

 1/50という水勾配は50cmの水平距離に対して1cmの高さとなり、水勾配が確保されるようにこのようなチェックが不可欠です。洗濯機パンとそれに対するトラップの排水口高さは各メーカーで異なるため、必ず寸法の確認が必要です。

(3) 洗濯機用水栓

 標準の洗濯機用の水栓は壁面からの突き出し長が長いため、全自動洗濯機を設置すると洗濯機の蓋と水栓に接続するホースが干渉し、使い勝手の悪い場合があります。これを軽減するため、図3の突き出し長の短い洗濯機用水栓(例えばTOTOのTW11GとTW11GR)があります。TW11GR は吐水口回転タイプでホースの取り回しがよく、ウォータハンマー音を低減する機能が内蔵されています。例に示した水栓は万一、全自動洗濯機に接続したホースが外れても緊急止水弁で瞬時に止水する緊急止水弁付ですので、洗濯機用水栓の更新だけでも安心が増します。

<TW11G>        <TW11GR>

図3 洗濯機用水栓の例

(4) 洗濯機関連の給排水管の接続

 洗濯機用水栓の配管は水栓の接続部分まで配管の更生工事をしていますので、水栓の取り付けに際して配管を傷つけないように注意します。
 洗濯機パンの排水管の管材料は硬質塩化ビニル管VPを使用します。

(5) 床の開口部、クッションフロア(CF)の補修

 洗濯機パンの排水口の周辺は30cm角の開口となっていて、洗濯機パンの更新にはさらに開口拡大の大工工事が必要です。洗濯機パンを標準より小さくした場合、それまで洗濯機パンの下にあった開口部周辺のクッションフロアが目に付くようになり、その補修が必要です。なお、(2)の洗濯機パンの下に配置するベニア板の表面にもCFを貼り付けると濡れた時の耐久性が増します。