給水設備改修工事(1998年)

 

  各戸内の給水配管は専有部であることから、その不具合などに対しては区分所有者が戸別に費用を負担して対応することになりますが、現実的な問題として、区分所有者が個別に専有部の給水配管の不具合の進行状況を判断することは不可能に近く、仮に臨時に工事費用を徴収して専有部の給水設備の改修工事の一斉実施を目指そうとしても、区分所有者それぞれの事情があって工事実施が歯抜けの状態となり、結果として「上階の住居から水漏れがあるのでは・・」と不安を持ちながら生活せざるを得なくなるという課題が発生します。
 「給配管診断報告書(平成8年5月)」を受けて専有部の給排水設備の改修も管理組合が共用部の給排水設備と一体的に対応するものとしてこれを組み込んでの修繕積立金の値上げと併せて管理組合総会で承認され、1998年の給水設備改修工事に漕ぎ着けました。
 断水という居住者への迷惑を伴う給水設備改修工事でしたが、お住まいの皆さんの協力を得て1998年8月から10月にかけての工事をスムーズにおこなうことができました。

 

■ 居室配水管更生工事

 平成8年(1996年)実施の「給水設備に関するアンケート」(回答率約50%)の結果、「水の出の悪い」、「赤水が出る」とされるお宅が一部ありました。水道は常に使っているため、錆の発生による水の出の低下はなかなか、気付きにくいものですが、一部の住居の方のご協力をいただいての給水配管の検査の結果、住居内の水栓接合部では高い閉塞率が生じていることが確認されました。
 給水設備の改修には、住居内の水道管を取り外して新たな管を取り付ける「更新工事」と、住居内の水道管をそのまま、利用して管内の錆を除去した後、その管内全面にわたってエポキシ樹脂を塗布(ライニング)して管内の錆の再発生を防ぎ、水道管の耐用年数を伸ばす「更生工事」の2つの方法があります。更新工事では床や壁を剥がして配管工事を行った後に、床や壁を復旧するという大掛かりな建築工事が必要で工事期間、工費がかかるのに対して、更生工事では床・壁等の建築物には手をつけないで工事ができ、工事期間も大幅に短縮されます。
 配管の診断より、当マンションの給水管は更生工事で対応できることが確認されたことから、1998年の専有部の給水配管の改修は更生工事で実施することになりました。
 そして1998年8月から10月にかけて住居の専有部分の給水管(各戸量水器二次側(室内側)より住居内の水栓・TES迄の水道配管)の更生工事が実施されました。また、これと並行してメーターボックス内の給水管取替が行われ、住居のキッチンシンク、洗面台、浴室の給水・給湯栓のシングル・レバー化によって生じるウォーターハンマー現象*を防ぐため、減圧弁の取り付けが行われました。

■ ポンプ室まわりの工事

 1996年に給水ポンプの異常停止が度々あり、制御盤の一部を交換することになりましたが、メーカーから同タイプの制御盤の製造終了が報告されました。当マンションに導入されている給水ポンプは制御盤とポンプ設備廻りが一体システムとして構成され、システムの一部が不具合を起こすと断水という居住者へ大きな迷惑がかかる事態となることから、信頼性向上が急務の課題となりました。加えてTESの更新に伴う水量増や、台所などの給水・給湯栓のシングル・レバー化による瞬時の水量増への対応が必要と認識されました。
 そこで給水ポンプの能力増大とインバータ制御方式(ポンプの速度制御に対応)の制御盤による給水ポンプシステムの更新を行いました。また、錆の発生 で弁が完全に閉まらないものがでていたことからポンプまわりの弁類の一部交換も実施しました。

 

*: ウォーターハンマー現象は、配管内の圧力が急激に高まって衝撃波となって配管をハンマーでたたいたような音が生じるもの。シングルレバー水栓器具や電磁弁のように水の流れを瞬時に止められる器具の使用が原因となる。配管で衝撃音が伝播されることから近隣住戸に迷惑をかけることになる。(当マンションのような対策が行われていない近隣のマンションで、この苦情がでていることを聞いています。)

 

【参考】