給排水設備改修工事(2008年)の記録

 

キッチンの配管 (SGPを排水管に使った住居の課題)


キッチン


キッチン流し台裏の配管

図1 キッチンの配管

  給水管は1970年代から亜鉛メッキ鋼管から、錆に強い硬質塩化ビニルライニング鋼管に材料が変わりました。しかし、管の部分は錆に強くてもその管端部を保護する継手がない状態が続き、管端コア内蔵継手が平成5年に認可されるまでの給水管は耐食性が十分でなく、更生工事や更新工事が必要となります。このため、建物が竣工するまでの期間を考慮して平成6年までに竣工の集合住宅では給排水設備の改修工事をその劣化診断の状況によって実施しなければならないといわれます。
 一方、キッチン系統や浴室・洗面系統の雑排水の排水管は1980年代まで配管用炭素鋼鋼管SGPが広く用いられていました。これは当時、排水管腐食の原因として管内面に付着した汚れや食べ物カスに繁殖する微生物の影響やマクロセル腐食などは理解されていなかったことによります。(その後、排水用硬質塩ビライニング鋼管が使用されるようになってきました。)

図2 漏水の発生した専有部分のキッチン系統排水枝管

 1983年竣工のコープ野村南流山弐番街のキッチン系統や洗面浴室系統の雑排水管にもSGPが用いられていました。そして2007年の定期雑排水管洗浄に際してある住居のキッチン枝管から漏水が生じました。漏水が発生した住居と異なりますが、図1右上の流し台の写真の下側に排水枝管の存在がわかります。この排水枝管の下面に相当する位置に図2左に示す穴が腐食により開いていました。このような状態になったのは腐食が進行し、亜鉛メッキ部分が薄皮一枚残しているような状態の上に堆積物などが溜まって漏水を抑えていたのが、定期雑排水管洗浄でこれが除去され、孔が開いて漏水となったものと考えられます。図2左は漏水した配管を半割して酸洗いした状態ですが、腐食の進行がよくわかります。
 (キッチン系統の排水枝管で漏水した住居は漏水後、すぐに排水管を修理しています。)

 

キッチン排水枝管の改修


[キッチン系統排水立管]

 コープ野村南流山弐番街は上記のキッチン系統の排水枝管からの漏水もあり、長期修繕計画の中の給排水設備改修工事を2008年に前倒し実施することを決定しました。一般のマンション管理組合では、キッチン系統の排水枝管は専有部分に該当することから区分所有者が実施する工事とされますが、コープ野村南流山弐番街は専有部分でも共用部分と一体的な管理が必要なものは管理組合で対応するものとして修繕積立金を設定していることから、専有部分のキッチン系統の排水枝管も含めて排水管の改修工事を実施しました。
 左側の写真はキッチン排水系統の立管をパイプシャフトを塞ぐ石膏ボードを外して露出した状態です。
[研磨前の配管内面] [研磨後の配管内面] [配管内面のライニング]

図3 給排水設備改修工事における専有部分のキッチン系統排水管改修

 立排水管はコンクリートスラブを貫通し、その周囲がモルタルで穴埋めされていますが、モルタルの強度が高く、配管を撤去するには大きな騒音の発生があり、生活しながらの工事が難しいため、埋め込み部分の配管を残して配管を切断し、図3の写真に示すように配管の中を研磨し、ライニングを行い、他の配管部分は排水用塩化ビニルライニング鋼管DVLPで新設しました。
 なお、キッチン系統排水枝管には図4に示すように継手を新設し、将来の専有部分におけるキッチンのリフォームの配管工事に配慮しています。

図4 キッチン系統排水枝管

 

洗面化粧台

図5 洗面化粧台の給水管の外面腐食

 2008年、給排水設備改修工事の着工準備中に、ある住居で洗面化粧台の給水管からの漏水の発生が保全専門委員会に報告されました。原因は外面腐食によるもので給水栓と洗面ボウルのパッキンの緩みによる水の流下、洗面化粧台下の棚に置かれた漂白剤などの雰囲気など、様々な原因が想定されましたが、原因を決定するまでには至りませんでした。
 2008年の給排水設備改修工事では洗面化粧台下の給水管の外面腐食の有無を全戸調べて、外面腐食の確認された住居は改修を行 ない、また、外面腐食を生じていない住居の給水管は念のため配管に施された塗装の上に再塗装の上、給水管の更生工事を行いました。

 

浴室・洗面系統排水管

浴室・洗面系統の立排水管の更生工事のために設けた点検口

左の写真の床の開口内。更生工事を短時間で実施できるようにキッチン系統排水管の工事中に事前に配置したストラブカップリングを使ってVP管を外した状態。

 浴室・洗面系統の排水管は共用部の立排水管(SGP)から各住居の枝管(VP)が接続されています。そこで立排水管の更生工事で改修を行いました。キッチン系統排水管の改修と浴室・洗面系統排水管の改修は工事実施日をずらして行なうため、先行するキッチン系統排水管の工事中に浴室・洗面系統の立排水管の更生工事を行うために写真の点検口をパイプシャフトと床に設けました。

【参考】 専有部の設備配管の一体的管理