大震災の擬似体験

 

 人間は、「怖いこと、楽しくないことは自然と考えない」ようにできています。一方、人間が人間であるといえる重要なものに、過去の経験を知恵として未来に役立てることができることがあります。

『私たちの身近に大きな地震が発生したらどうなるでしょうか?』

 その地震の規模によって状況は異なるため、正確な答えを出すのは難しいです。しかし、どのような状況が想定されるか、心の準備をしておくこと、シミュレーションという方法ですが、いざという時に慌てないために役に立ちます。千葉県が大規模地震に見舞われた場合に想定される被害状況については、千葉県総務部消防地震防災課の「災害や事故」でも紹介されています。
 なお、『千葉県の地下構造調査』(千葉県総務部消防地震防災課)によれば、県西部地域の地下構造は地震の際にゆれが集中するような構造ではなく、基盤岩から地表まで連続するような断層も確認されないとのことです。
 次に過去の震災の事例を踏まえながら、想定される状況をお話しします。

 阪神淡路大震災のことを忘れてはいけないと思い、左の写真の本などを持っています。
 通勤・通学で東京に通われる方が多いと思いますので、溝口恵の『徹底検証 東京直下大地震』(2001, 小学館文庫)を一読されるのもよいと思います。

■ 周囲の状況

 私たちの住んでいる南流山地域は、江戸川の近くにあります。区画整備事業の前は水田地帯となっていました。
 新潟地震に際して、河口周辺で地盤の大規模な液状化現象が確認され、その後、地震に伴って液状化現状が発生することが各所で認識されるようになりました。南流山は昔の土地利用状況からも大地震では道路下の地盤が液状化して道路が割れたり、流砂が吹き出すことが考えられます。このため、大地震直後の自動車の使用は困難になる想定されます。

■ 建物

 大きな地震がきた場合、その強さによって被害の程度は異なります。阪神大震災の建物の被害を見ますと、1階がピロティ(柱だけの広い空間がある状態)の建物で1階が倒壊したもの、建物の途中の構造の変化している部分での壊れたもの、建物の耐震壁、柱のバランスが悪く、壊れたものなどがあります。また、阪神大震災でまるごと倒壊したり、中間階で倒壊したビルのほとんどは、建築基準法の改正前の1981年以前に建てられたものといわれます。いつ建てられた建物かによっても違いますが、必要に応じて検査、耐震補強も検討の必要があります。

■ 家の中

 大地震では、たんすなどの背の高い家具は倒れ、本棚の本は飛び出して散乱し、観音開きの扉の家具は扉が開いて中のものが飛び出して食器などが入っている場合は、それが割れて床一面に散乱し、壁に吊っている額縁などは全て落ちるといった状況が想定されます。そして棚の上に載せたものは落下してくるでしょう。
 照明器具も吊っているものは落ちて、電球が割れて周囲にガラスが散乱します。テレビは、宮城県沖地震(マグニチュード7.2)のときは55%の家で転倒したといわれるように転倒しやすいものの一つです。キャスターのついた家具は滑って移動します。阪神大震災では、マンション内でピアノが2m移動した事例が報告されています。
 これらによる人的な被害は、地震がいつ発生するかによって異なります。就寝中であれば、照明器具が就寝中の人の上に落下してきて割れた電球などによるケガをしたり、タンスなどが人の上に倒れてきて動けなくなることがあります。また、入り口をふさぐような形で家具が倒れた場合、即座に避難することが困難になります。
 昼間の食事の準備をしている時は、食器棚から飛び出してくる食器などでけがをしたり、倒れてくる冷蔵庫に挟まれたりする可能性があります。また、火を使っている場合、火災という二次災害の危険があります。しかし、調理中に地震が起きたら、身の安全を第一に考えましょう。火災の心配をするあまり、慌てて火を消そうとしたり、ガスの元栓を閉めようとすると熱湯や熱い料理でけがをする危険性があります。もちろん余裕があれば真っ先に火を始末してください。

■ 建物の外、エレベータ

 集合住宅ではバルコニーに物品が置いてある場合、地震によってバルコニーの手摺りの隙間から落ちたり、積み重ねて品物が置いてある場合は、それが倒れてバルコニーを越えて落下してきます。戸建の住宅では瓦の落下などが考えられます。建物の外に出るときはその安全を確認し、ヘルメットやヘルメットがなければ座布団で頭を覆い落下物から身を守るようにしてください。
 集合住宅に住まわれている場合、エレベータは地震感知装置により自動的に最寄り階で止まるようになっています。そこで自力でドアを開けて非難することになります。また、揺れを感じたらすぐに全ての階のボタンを押すのも手です。最も近い階で停止します。階の途中で止まった場合はインターフォンで連絡をとり、カゴの中で救助を待つことになります。地震では、閉じ込められるおそれのあるエレベータは使わず階段で避難してください。

■ 電気、水道、ガス、電話

 大地震が発生した場合、停電、断水、ガス停止、また、電話がつかえなくなることを覚悟しなければなりません。

【電気】

 電気は電柱を経由して各住居に送電されます。大地震においては架空線が電柱の倒壊によって切れ、停電となる可能性が高いといえます。大地震による電気系統の損害の範囲は広域となるため、長期間、停電となるでしょう。なお、阪神大震災で電気が復旧した際にショートなどをおこして火災となる通電火災があったことから、必ず、機器はコンセントから抜いておき、ブレーカを切った状態にしておきましょう。

【上下水道】

 大地震に際しては、道路の下に埋設された水道管の破損の可能性があります。南流山地域がこのような被害に見舞われる場合、相当の大規模の地震となるため、各地域へ給水車がくるまで何日もかかると考えられます。そして、その間の水は住民自らが蓄えたものでしのぐ必要があります。
 地中埋設の下水管が損傷をうけていなければ、風呂の残り湯があれば住居内の水洗トイレをつかうことができます。しかし、上記の液状化現状が起きている場合には、下水配管も影響を受ける可能性が高く、流れずにつまる可能性があります。この場合、屋外に穴を掘って、あるいは江戸川河川敷に穴を掘って仮設トイレとすることが想定されます。

【ガス】

 ガスは、地震が検知されると緊急遮断弁が作動し,供給が停止されます。埋設されたガス管に破損していなければ、比較的早く復旧することが期待されます。なお、ガスによる二次災害を防ぐために、各ガス器具のコックを閉めて、元栓を閉めるようにします。

【電話】

 電話線は、電気と同様に架空線を経由して接続されています。このため、電柱の倒壊により、電話がつかえなくなる可能性が高いといえます。また、最近の電話器は電源の供給がないと使えないものが多いことから、仮に電話線は大丈夫でも停電のために使用できないことになります。

■ 避難

 災害時の避難場所として、南流山センター 、南流山小学校、南流山中学校、江戸川河川敷などが流山市から指定されています。しかし、あわてて避難することは木造家屋の倒壊や火事、あるいは堤防の損壊などで危険な場合 もありますので、まず、周辺状況の確認が必要です。近くに広い空き地があれば、周囲の安全が確認されるまで待機して、それから行動することが妥当と考えられます。(大震災が発生した時には行政の機能はマヒ状態になることが想定されます。住民が自ら解決していく必要があります。)

 

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